第5章 彼の地より来たりしもの


再会と離別と

鬼子母神からさらに北上し、行ける範囲ギリギリのところまで行くと、目的のシャンシャンシティにたどり着く。かつてここにはスガモプリズンがあり、戦犯が収監されていた。そして今また、悪魔が管理する牢獄になっている。なお、中は広くて複雑な作りになっており、都庁以来の難関である。覚悟すること。

1Fから入ってB1Fへ下り、大破壊前は動く歩道だったところをひたすら進む。途中、通路を塞ぐように出現する外道フォッグや下魔アバドンズを退け、エレベータを見つけたら、それに乗って上へ向かう。58Fに行く前に1Fに立ち寄ると、ターミナルを発見。セーブできるほか、マイシテーに移動して、体力を回復してから戻ってくることもできる。ただし、AMSデータは登録されていない。ちなみに、このフロアからも階段でB1Fに下りられるが、何もない。

58F。人間はおらず、悪魔が徘徊するだけだ。59F。固定悪魔として、妖鳥ポルタゲが出現。60F。転送装置があちこちに設置されたエリアに出る。ワープの連続で移動するのだが、これが悩ましい。間違ったポイントを選ぶと、何度でもぐるぐると同じところを回らなければならないのだ。

しかも、このフロアでは幽鬼ヴェータラ、降天使ブエル、堕天使シトリーといった、侮りがたい連中が待ちかまえている。先制攻撃で斃さないと、反撃されてピンチになる可能性が高い。前もって仲魔を呼びだしておくべきだろう。

ただ、シトリーを斃すと、氷狼剣を落とすことがある。これが手に入ればしめたもの。この時点では、せいぜいスパイダークロウやセラミックブレード程度の武器しか持っていないはず。それに比べれば威力に雲泥の差がある。戦闘中に使えばブフーラと同じ効果があり、しかも無制限に使用できるが、装備したほうがはるかに得。戦闘が格段に楽になるし、「氷結」の追加効果で敵の動きを封じることもできるからだ。

とはいえ、入手できる確率はそれほど高くない。そこで、余裕があれば、わざとループにはまるという手もある。そのフロアに悪魔が1体でも残っていると、転送時にすべての悪魔が復活するので、氷狼剣が手に入るまで粘ろうというもの。経験値も稼げて一石二鳥である。

攻略のほうに話を戻そう。広間の奥にある転送装置でαを選択し、59Fへ。ここではソーマが手に入る。さらに転送され、58Fへ。天使シャムシエルと遭遇。ここからシュートで、約60階分を一気に墜落する。

ふたたび1F。ここから、攻略の後半戦がスタートする。不思議なことに、墜落のダメージはそれほどでもない。落ちてきた縦穴には、何らかの魔力が作用していたのだろうか。

幽鬼ハクマ・ブ・トゥーと屍鬼バタリオンの大群を蹴散らし、B1Fへ。悪霊ラルウァイ、堕天使ハルペスなどが出現する。マップをきちんと把握していなければ、やはり同じところをぐるぐる回るハメになる。1Fへの階段があり、のぼった先では、疾風の香と金丹×4を拾うことができる。ルートとしては、この階段ではなく、B1Fの南西にあるエレベータを利用するのが正解。2Fへ移動するのだが、寄り道して1Fで降りると、マッスルドリンコを入手できる。

2F。噂の牢獄がここにある。たくさんの人間や悪魔人たちが囚われている。もはや観念している人も。助けたいところだが、いまはまだダメだ。護衛の悪魔を蹴散らして先を急ぐ。

一番奥の牢獄に、ウズメという天女がいる。彼女の話では、高天原が封印されて戻れなくなったところを、プリズンの支配者アバドンに捕まってしまったのだという。アバドンは、囚人、とくに女性を拷問にかけて無惨に殺すことを何よりの楽しみとしている。そしてウズメは、死体の前で、歓喜に浸っているアバドンをさらに盛り上げるための舞いを舞わされているのだ(第9章3節のコラム参照)。助けてくれと頼まれるので、解放してあげると、天の香をくれる。

3Fは、ワープゾーンの連続。敵は下魔アバドンズぐらいしか出ないものの、正しいルートを見つけだすのはかなり難しい。これはもう、試行錯誤を繰り返して体でマップを覚えるほかないだろう。回廊のようなルートを通って、固定悪魔であるマシン・T-92βに2度遭遇することができたら、ゴールは近い。ちなみに、ルートによっては端末から「DMホリーライツ」を入手できるようだが、はたしてそんな余裕があるかどうか。

ワープのはてに、10Fにたどり着く。だだっぴろい大広間だ。ターミナル回線とリンクした端末があり、セーブできる。また、回復ポイントもある。幽鬼ヴェータラと幽鬼ナイトストーカーが大量に徘徊しているので、戦闘で消耗しないように気をつけよう。

大広間の奥、薄暗い玄室へと葛城たちは足を踏み入れる。そこには、凄惨な光景が広がっていた。全裸にされた人々が鎖につながれ、天井から釣り下げられているのである。腐肉と血とが混ざり合った、むせ返るような臭気が辺り一面を覆っている。その下には、巨大な剣を構えた1体の悪魔がおり、その姿は死刑執行人さながらである。悪魔は彼らを拷問にかけ、哀れな犠牲者たちが苦しみ悶えつつ死んでいく様子を眺めながら、ひとり悦に入っているのだ。目を背けたくなるような残虐さだった。

降天使アバドン。由宇香を喰らい、爆心地の闘技場コロシアムにも姿を見せた大悪魔である。かつてはバエルの側近だったというが、いまや半独立勢力として、東京の一角を支配するまでに至った。そいつが、次の犠牲者を選ぶべく、吊された人々を睨め回している。そして、その視線の先にいた少女は……なんと英美だった。都庁襲撃以来行方がわからなくなっていた英美が、ここにいたのだ。思わず英美の名を叫ぶ葛城。だが、彼女はうなだれたまま、身動きひとつしない。

葛城の声を聞き、アバドンは振り返った。奴もこちらのことは覚えていたようだ。アドニスごときを倒した程度でいい気になるな、崇高な儀式を邪魔した意味を思い知らせてくれよう、と言って、アバドンは襲いかかってきた。

コラム:アバドン

アバドンとは、疫病をもたらすイナゴの王であり、奈落の魔神である。その名はヘブライ語で「破壊」「滅亡」「死」などを意味するといい、ギリシャ語ではアポリオン(破壊者)である。『ヨハネの黙示録』では、地獄の奥底に住む堕天使として、最後の審判が訪れるときに、イナゴに似た使い魔を放って人間を苦しめ抜くとされる。魔術書においても、害悪、不和、戦争などをもたらす存在である。

その姿は、魔術書によれば、身体を緑の鱗に包まれ、水掻きのような形の翼をもち、赤い髪をした男だという。翼は鎌状だとの説もある。また、ジョン・バニヤンの『天路歴程 Pilgrim's Progress』には、全身を鱗に覆われ、ドラゴンの翼と熊の足をもち、腹から煙と火を吐き出していると書かれている。

なお、アバドンのルーツはギリシャにあるらしい。太陽神アポロンによって征服された大蛇ピュトーンがアポロンと同一視され、アポリオンとなった。アポロンは死と疫病の神でもあり、アポリオンはその性質を受け継いで冥界の黒い太陽、すなわち死神として認識された。これがヘブライ人に伝わり、アバドンになったという(生体エナジー協会の『悪魔全書』参照)。

体力が自慢の力押しタイプ。ポイズンブレスを吐いたり、アギヤードを操ったりなどもするが、手にした断頭剣を振り回してくることが多い。こちらも正攻法で対処しよう。補助系魔法で攻撃力と防御力を上昇させつつ、じっくりと剣で攻撃。氷狼剣を手にしていれば楽勝だ。ちなみに、魔法攻撃はあまり効かない。そして、さしもの悪魔も斃れるときが来た。

アバドンの死骸はみるみるうちに溶けてしまい、周囲に汚液が広がっていく。その中から、白く輝く物が姿を現した。それは、由宇香の左腕だった。拾い上げてみると、完全な形を保ったまま、朽ちるでもなく、まるで生きているかのように規則正しく脈打っているではないか。葛城は、あまりの驚きに声も出ない。

「すべてのパーツを集めれば、蘇らせることができるかもしれない」。一部始終を無言で見つめていた泪が、不意に呟いた。きっとあなたはそうするに違いないわ、と彼女は叫び、突然出口に向かって走り出した。葛城は泪の腕をつかんで引き止めようとするが、泪はその手をふりほどき、感情をほとばしらせながら、葛城に言葉をぶつけてくる。そうやってかつての恋人の断片を拾い集め、復讐を果たせばいい。私はこれ以上つきあえない。それだけ言うと、振り返りもせずに泪は走り去った。

葛城がさらに追いかけようしたそのとき、頭上から、苦しげな英美の呻きが聞こえてきた。意識を取り戻したのだ。英美を放っておくわけにもいかず、泪のことはひとまず諦める。

ついに泪とも別れてしまった葛城。英美を解放し、崩れそうな身体を支えながら、傍らに打ち捨てられていたジャケットを羽織らせてやる。元の装備は残っていたが、武器だけは奪われてしまったようだ。

英美は泣きそうになりながらも、つとめて声の調子を明るくし、自分の身に起こったことを語ってくれる。都庁襲撃の際も無事だった彼女は、突然人が変わってしまった渡邊に悪魔側のスパイだと決めつけられ、都庁を追放されてしまった。早坂と葛城をなんとか捜し出そうとしたものの、悪魔に捕まってここに連れてこられたのだという。ふたりとも絶対生きてると信じてた――そう言うと英美は葛城にしがみつき、泣き出した。

しばらくそうしていたあと、英美とともに行動を再開する。行方が杳として知れない早坂を捜さねば。が、その前にこの悪魔の牢獄から脱出する必要がある。

残念ながら、玄室内でほかに生き残った人はいなかった。玄室を出てすぐのところで、また由宇香のヴィジョンが現れる。例によって聞き取りにくいが、身体を集めてくれということ、それに市ヶ谷へ行けということのようである。主を失った悪魔たちは逃げ出してしまっているので、帰るのは非常に楽だ。3Fまで、すぐに戻ってこれる。

2Fでは、英美の提案に従い、囚われている人たちを助けてあげる。感謝されて悪い気はしない。ただ、助けても助けなくても、属性に影響はない。アブナイ目をしたバール兵だけはそのままにして、牢獄エリアを脱出。あとは、ターミナルから脱出してもよし、出口まで行くもよし。いずれにせよ、シャンシャンシティを出ようとするとき、英美が「絶対に達也たちを見つけようね!」と話しかけてくる。

最後に余談だが、アバドンを斃したときに泪が瀕死の場合、由宇香の左腕が出現するとともに泪をまばゆい光が包み、蘇生する。仲魔にはそのような現象は起きない。なぜ、彼女だけが回復したのか。ここには何か秘密が隠されていそうだ。

サイバネティック

マイシテーで休息したら、月齢が変化したあとに、シャンシャンシティを再度訪れてみよう。復興が進んでいるはずだ。中の構造も変化していて、かつては迷路のように入り組んでいたところも、いまや自由に行き来できる。また、B1Fでは動く歩道が利用可能になっている(右側通行である点に注意)。

1FのターミナルでAMSデータをインストールしたら、B1Fへ。ここは店がたくさん並んでいる。装備を更新しておこう。今後に備えて、それまでの戦闘で貯めたマッカを惜しまず、仲魔の分もふくめていいものを買っておくべきだ。とりわけ防具は大事。これに金をかけておかないと、相対的にレベルの低い英美はすぐに瀕死になってしまう。コンサバスーツ、ジャミングアーム、メタルクラウン、TAKAIブーツあたりがおすすめ。武器屋では、強力な弾薬が手に入る。

コンピュータショップでANS Ver2.0とセーバーIIを購入しよう。ANS Ver2.0は、付近の人間の生体反応を表示してくれる。早い話が、初台で英美がくれたANSと同等の機能を提供するものだ。コンピュータといえば、1Fの端末から降天使ブエルのDDSデータをダウンロードできる。メディアラマとパララディを使えるので、回復用にキープしておくのも悪くない。

装備類が整ったら、住人から話を聞いて回る。これは鉄則。途中、マグネタイトやチョコブラウニーを拾えるだろう。また、エレベータで58Fに行ける。60Fまで階段で続いており、妖精マベルや夜魔リリムなどの悪魔が出現する。59Fでプチダゴン、60Fで職人の香が入手できるが、無理して取りに来る必要はほとんどない。

2Fの牢獄は、いまでは、悪いことをした奴を懲らしめるために使われている。ほとんど空いているが、例のアブナイ目をしたバール兵はそのままだ。

3Fだけは、なぜかAMSにマップが登録されていない。だが、やはり構造は変化している。ワープゾーンがふたつあり、ひとつは邪教の館につながっている。邪教の館がいつも使いづらい場所にあるのは、人目を忍んで活動しているからだろう。このルートからは、悪魔と遭遇するエリアにも飛べる。出現するのは、やはり妖精マベルと夜魔リリム。わざわざ探索しても、宝箱やアイテムボックスはひとつもない。

もうひとつのルートは、10Fにワープするものだ。端末や回復ポイントはあいかわらず存在しているが、アバドンがいた玄室は、いまやただの空き部屋だ。ただ、新たに別の空間もできている。そこは一見すると広いのだが、見えない壁があり、何度もAMSをチェックしながら進むことになるだろう。途中、魔獣オサキ狐と水妖エアリアルが出現するが、弱いので心配はない。

いったん11Fへ上がり、別の階段から10Fへ降りてくると、奥まったところにガンマニアがひっそりと開いている店を発見。ふつうでは手に入りにくい、高価で強力なガンが並んでいる。たとえば、ヨシツネN9、ヘヴンズファイア、DBW9レーヴァテインなど。また、弾薬も強力なものがそろっている。これらの組み合わせにより、銃による攻撃力は大幅に上昇するだろう。ただ、能力不足で装備できない場合もあるので注意。できれば、ここでデザートイーグルを購入しておきたい。そして、10Fを試射場に見立てて、狐狩りとしゃれ込むのも悪くない。

ひととおり回ったら、次の行動に移る。由宇香の左腕の保存方法を見つけなければ。切断されてなお生きているとはいえ、エネルギーの供給を絶たれた状態が続けば、今度こそ死んでしまうかもしれない。相談できそうなのは、やはり平沢博士だろう。デミ・ヒューマンを研究しているなら、たぶん、生体の保存方法も知っているはず。戸山シェルターへ向かう。

ここは以前訪れた(第4章6節参照)ので、研究所へ直通のルートを通ることができる。平沢博士に会って事情を話すと、保存に必要な培養槽が手元にないという。だが、博士の弟子である日下章人くさかあきひとの研究所になら置いてあるとか。研究所は市ヶ谷の、かつて軍部(自衛隊?)のシェルターがあった場所にある。ただ、日下は博士より偏屈なので、紹介状がないと相手にしてくれないそうだ。そこで、博士が親切にも紹介状を書いてくれる。

「これを持っていけば、さしもの奴も断れんだろう」。意味深な言葉とともに、平沢博士は紹介状を手渡す。そのとき、ひとりの少女が元気よく部屋に飛び込んできた。「ああ〜っ! お兄ちゃん!」。久しぶりに聞く、メイの声だった。

カズミとメイは、薬をもらえるかもしれないと聞いて、ここへやってきた。ふたりもまた、あの迷宮を突破してきたのだ。平沢博士は事情を聞いて、メイを預かることにした。病気の治療に、旅は向いていないからだ。一方カズミは、行方不明になっている博士の娘、アリスを捜しに行ったのだという。修行も兼ねた旅を、まだ続けているようだ。

環境が良くなったこともあり、メイはずいぶんと元気になった。まだ咳は出るものの、走り回れるようにもなったという。顔色もよく、なにより楽しそうだ。その無邪気な笑顔は、まるで、おとぎの国の住人のようである。平沢博士や時計兎といった友達ができ、兄妹ふたりっきりの寂しい生活から抜け出せたことが、メイにとって一番の薬になっているのだろう。

葛城たちと平沢博士との関係も、メイという共通の知人を介して、ぐっと親しくなった。これまでは博士の興味の対象という程度だったが、「心から歓迎する」と言ってもらえるようになった。研究所の中を好きなように見て回ってもいいという。破格の待遇だ。それにしても、この平沢博士。メイを預かったことといい、彼女から「平沢おじいちゃん」と呼ばれて慕われていることといい、気難しそうな風貌とは裏腹に、優しくてとてもいい人である。

研究所をあとにし、市ヶ谷シェルターへ。どうやら、由宇香のヴィジョン通りの展開になっている。戸山シェルターと新宿のあいだに、細長い道が見つかるはずだ。以前は瓦礫が通行を妨げていたが、今は通れるようになっている。ここを進んでいく。

余談だが、瓦礫がどうして取り除かれているのかは、いつも謎である。地上で生活している人々がチームを組んで作業にあたっているのだろうか。それとも、まさか悪魔がせっせと瓦礫を崩しているなんてことは……。

シェルター付近まで来ると、緑衣の人物が道の先に立っていた。その人物は、葛城たちを見ると、歩み寄ってきた。それは、初台で由宇香を喰らった悪魔のひとり、レラジエであった。レラジエは、葛城たちがアバドンを斃したことを聞きつけるや、由宇香の左腕の保存方法を求めてこの市ヶ谷に一行が必ず現れると考え、待っていたのだという。

さすがに高位悪魔だけあって、恐るべき洞察力である。悪魔の目的は、葛城の持つ由宇香の左腕だった。レラジエが喰らったのは右腕だが、未だ同化されてはいないものの、それは飛躍的なパワーアップを悪魔にもたらした。そこで、左腕も入手し、さらに強くなろうと目論んでいるわけだ。

レラジエは、決闘を申し出る。自分が勝てば葛城の持つ左腕をもらい受けるが、葛城たちが勝てば、自分が持つ右腕を差し出す、という。ここで受けて立つかどうか選択になるが、実は拒否しても英美が納得しないので、強制的に戦闘となる。ちなみに、葛城が瀕死の場合、レラジエと会話するのは英美だ。左腕を渡せば見逃してやる、と取引をもちかけてくるレラジエに対し、英美は断固拒絶し、やはり戦闘になる。

コラム:レラジエ

レラジエは、レラィエともいい、ソロモン王によって封印された72柱の魔神のひとりである。魔界の大公サルガタナスの配下とされ、30個軍団を支配する。射手の侯爵という称号どおり、緑の服を着た狩人の姿をしており、弓矢を携えている。戦争や不和を起こすほか、敵の傷を化膿させて、癒える速度を落としたり、止めたりする力があるとされる。

降天使レラジエは、火魔矢、五月雨矢、腐乱の矢など、魔力を込めた矢を次々に放ってくる。五月雨矢は、パーティー全体にダメージ。また、腐乱の矢は要注意である。追加効果が「猛毒」で、これはポイズノンXでは回復できない。毒によって敵の傷が癒える速度を落としているわけだ。ほかに、ザンマの魔法も唱えてくる。

攻撃魔法に対しては全般的に耐性があり、体力はアバドン以上。また、ディアの魔法で回復を図ることもあるので、長期戦は必至だ。とくに、こちらは英美のレベルが低く、能力値の低さゆえ装備も貧弱なため、どうしても彼女を庇いながらの戦闘となる。対アバドン戦よりも困難な戦いになることを覚悟しておこう。ただ、氷狼剣を入手していれば、状況は違ってくるだろう。

やっとの思いでレラジエを撃破すると、その体はだんだんと消滅していき、由宇香の右腕だけが残った。それは、白く柔らかな光をこちらに投げかけている。これを入手し、パーツはふたつに。いよいよ保存の必要性が高まってきた。シェルターの中へ。

ちなみに、レラジエ等のボス悪魔は、斃すと以後合体で仲魔にできるが、ボス戦のときより格段に弱い。由宇香のパーツを体内に取り込んでいない状態では、この程度の力しか発揮できないのである。

階段で降りていく。ロボットがいて、一瞬敵かと錯覚しそうになるが、これらはすべて警備用らしく、動き出すことはない。もとは軍の所有物だったものを改良したらしい。B3Fに受付があり、担当の女性に紹介状を渡すと、紹介状のカードに付けられたIDを照合したあと、通してくれる。なお、紹介状なしにここを訪れた場合、追い返されてしまう。受付を通過したあとは、天井のライトが誘導してくれるとかで、勝手に日下の研究室まで移動する。

目の前にいる日下章人は、白衣を着た長身長髪の男で、想像していたよりも若く、30代くらいにしか見えない。が、サイバネティック医療の第一人者だというから、自分の肉体を改造して若さを保っているのかもしれなかった。

彼は、すでに紹介状を読んでいた。パーツを手渡すと、奥の部屋でしばらく調べたあと、戻ってきてこう言う。こちらの条件さえ承諾してくれれば、本来なら高額な維持費を要求する培養槽でのパーツの保管を、無料で請け負う、と。その条件とは、由宇香の細胞を一部、研究素材として日下に提供するというものだった。皮膚や組織の細胞をほんの微量だけサンプルとして採取すればよく、パーツ自体に損傷を与えるような心配は一切ない、という。

日下が断れないように書いた、という平沢博士の言葉は、この取引のことを意味していたのだ。金よりも知的好奇心を優先する日下の性格を、博士は知り抜いていた。由宇香のパーツは細胞単体で生命活動を維持しており、格好の研究対象になる。だから、紹介状の中で、細胞の提供とパーツの保管を交換条件にするよう日下を促したのである。

ここで、選択を迫られる。愛する人の体を実験などに使われるのはイヤだ、というのであれば、この申し出を断ることになる。すると日下は、葛城に忠告してくれる。養分の摂取を絶たれたパーツは、干からびていく運命にあるという。培養槽で保管しないのなら、人体に移植して養分の補給をするなど、別の保存方法を採らねばならない。いまの葛城たちに、それは無理な相談だった。ここは、素直にOKしたほうがいい。

条件を承諾し、パーツを日下に預かってもらうことに。彼に連れられ、B4Fへ。そこは、脳などの臓器をはじめ、全身のパーツがいくつもの培養槽の中に浸かっているという、あまりぞっとしない場所だった。日下は、由宇香の両腕を空いている培養槽に入れ、一通り説明してくれたあと、さっさと研究室に戻っていった。

以後、シェルター内を自由に動けるようになる。まずは、B5Fの病棟で、入院患者たちの話を聞こう。市ヶ谷には、サイバネティック医療を受けに来た人々が大勢集まっている。サイバーアームのバージョンアップを目指す者、若返りの手術を受けようとする紳士、人間の見た目を手に入れようとする悪魔人など。「癒着ペット」という人工クリーチャーを体内に埋め込んでもらうという女性もいる。どれも相当高額の治療費を請求されるはずだが、みんな己の欲望を満たすため、なんとか金を工面してここを訪れるのだ。

なお、奇妙な噂に注意しておこう。市ヶ谷シェルターには、闇ルートでかなりの数の死体が売られてくるのだという。治療に使うというよりはむしろ、日下の実験用らしい。

あと、歩き回っていると、やたら多くの看護婦を目にする。しかも、その言動はとても正規の看護婦とは思えない。それもそのはず、彼女たちはみな日下に造られた有機デミ・ヒューマンなのだ。しかし、ちゃんとDNAをもち、人間とまったく同じ振る舞いができるように設計されているのだという。

日下の研究室の近くにはターミナルがあり、ここからマイシテーとの行き来が可能になる。これ以後、紹介状なしでも入口から入れるようになるが、ターミナルを移動するほうがはるかに楽だろう。また、別の端末からはDAS Ver2.0が手に入る。悪魔の状態を分析できるだけでなく、一度斃した悪魔については完全な情報を得られるという逸品である。

そして、これからもパーツを入手したときは日下の世話になることになる。また、長い間放置していたためパーツが干上がってしまった場合でも、彼の天才的な腕をもってすれば、元に戻すことができるのだ。ただし、高額の料金を取られるが。

ルイ・サイファー

市ヶ谷シェルターでのイベントをクリアすると、東池袋駅から有楽町線が利用できるようになる。といっても、地下鉄が走っているわけもなく、線路の上を歩いていくのだ。有楽町線は護国寺駅と飯田橋駅につながっているが、ここでは、護国寺駅へ行くことにする。

護国寺駅を出て、未知の世界へと足を踏み出していく。目的地は護国寺。廃墟の中、なぜか西洋鳥居が新しく建てられている。不思議な光景だ。護国寺をあとにし、高速道路に乗って神田方面へ向かう。もちろん、これも道路を歩いていくのだ。

余談だが、護国寺は新義真言宗豊山派の大本山で、実際はかなり大きな寺院であるという。また、新義真言宗の祖、興教大師は修法のエキスパートであり、火焔に包まれた不動明王の姿に化身したと伝えられている。護国寺と不動明王とのつながりに注意しておこう。

神田の街へ入る。ここにももう、シャンシャンシティが開放されたニュースは伝わっているようだ。エレベータで下へ。B4Fの端末からは、ANS Ver.2.1をインストールできる。人間ばかりか悪魔の生体反応まで感知できる、ナビゲーションシステムの最新バージョンだが、ダウンロードができない場合もある。葛城の能力値と関連しているのかもしれないが、詳しい原因は不明だ。

B5Fは地下街になっていて、一通りの施設がそろっている。武器屋は、シャンシャンシティにあったガンマニアの店ほどではないにせよ、そこそこの銃器・弾薬を置いている。ここでデザートイーグルを購入してもいい。防具屋は、主に仲魔専用の防具をそろえている。薬屋では、アンチドートPPを買っておこう。毒と麻痺を両方回復できる。

病院では、悪魔の治療もいっしょに行ってくれるので、ありがたい。邪教の館が比較的利用しやすい場所にあるのもうれしい。なお、酒場の噂によると、有明にはミュータントが集団で暮らす、隠された街があるとか。

地下街のさらに下には、「学術研究都市」と呼ばれる研究施設がある。B6Fからエレベータで移動。施設の規模は地下街の比ではなく、その広さに驚かされる。研究者はミュータントばかりで、彼らは最先端分野の研究を進めている。とくにサイバネティック研究に関しては、市ヶ谷シェルターと並ぶメッカだ。ただ、純粋に研究が目的なので、市ヶ谷のように強化手術を行ってくれるわけではない。

研究者たちは自分の研究に没頭しているため、あまり葛城たちに興味はないようだ。その入れ込みようたるや、人体実験のために、サイバーパーツで自分の身体を改造するほどだという。話してくれる内容も研究に関することばかりなので、攻略上のヒントは期待できない。

B16Fにはターミナルがあり、セーブや転送のほか、AMSデータのダウンロードも可能だ。B17Fへ降りると、端末から水妖アプサラスのDDSデータを入手できる。貴重なものだが、ダウンロード時にウィルスが侵入してくるので、対応するセーバーがないと危険だ。また、ワープゾーンの先では、疾風の香を拾える。

さて、この研究所の主宰者は、ルイ・サイファーという。かなりのカリスマであり、研究者の中には、彼をほとんど神のように崇めるものさえいる。また、その「身元に関する情報は正確で、何ひとつ問題は見られない」のだそうだ。彼の居場所は、B17Fの奥にある部屋だ。繰り返し転送機を使って移動しなければ、たどり着けない。

その部屋に入ると、彼は葛城たちに話しかけてくる(葛城か英美が瀕死だと、回復してくれる)。そして、葛城がシェルター出身のデビルバスターであることを言い当てる。手の状態とアームターミナルの種類から推理したという。手法からしてシャーロック・ホームズそのままである。IQ 300の知能をもってすれば、たやすいことらしかったが、なんとなく小手先の芸という感じがする。

由宇香のパーツの保存方法について相談すると、興味を示した彼は、個人用の培養槽を売ってくれるという。しかし、18,000マッカという値段は決して安くない。それに、設置場所の確保と、運搬方法はこちらで算段をつけなければならない。運搬は仲魔にやらせるとしても、培養槽を置く場所はいまのところない。将来的にどうするかは、プレイヤーの判断に委ねられている。

コラム:ルシファーの真意

ルイ・サイファーが魔王ルシファーの仮の姿であることは、よく知られている(『真・女神転生I』)。だが、ふつう彼が人間界に干渉すべく人の姿をとるときは、西欧の貴族の末裔とでもいったような風貌で現れることが多い。それが、偽典中ではミュータントを率いる研究者の長である。なぜ、こんな立場に納まっているのか。

そのヒントは、初台の端末情報に隠されているようだ。情報によれば、神田学術研究都市には政府の資金援助と特別保護が実施されているという。ここでいう政府とは、おそらく、各地のシェルターの最高幹部から構成された評議会のようなもののことであろう。地上が無政府状態になったあとも、各シェルターは協調して政策を遂行し、あわよくば地上をふたたびコントロールしようとしていたのである(第2章4節のコラム参照)。ただ、各シェルターが崩壊したあとは、政府も消滅してしまったのだろうが。

それはさておき。政府が神田を特別扱いしたのは、ここの研究成果が無償で各シェルターに発信されていたためだ。すると、ルシファーがシェルターを援助していた形になる。その理由を推測してみると、シェルターを延命させてバエル勢力の拡大を防ごうとしたのかもしれない。東京の支配を目指すバエルがルシファーと敵対関係にあったのだとすれば、敵の敵は味方、ということで、ルシファーが人間に手を貸すこともありうるだろう。

しかし、東京のカオス化を目指すルシファーにとって、同じ目的をもったバエルと敵対する理由はない、とも思える。すると、逆に、ルシファーは巧妙にシェルターを陥れていたのかもしれない。たとえば、DDMの技術が神田から発信されたものだったとしたらどうだろう。便利な技術なので、シェルターの人々はこれを喜んで受け入れるだろう。だが、ルシファーはこの技術を悪用する方法も知っている。バエル勢力は、その方法を教わったうえで、シェルターに侵入して……。

どちらもありうるが、やはり、シェルターを援助していたと考えたほうがしっくりくる。バエルが東京を完全に支配してしまえば、いずれはルシファーと敵対することになるだろう。そんな相手と一時的にせよ手を組むのは危険すぎるからだ。

なお、最近の鈴木大司教の見解によれば、ルシファーは人類を愛し、叡智と光明をもたらす存在で、ギリシャ神話のプロメテウスに相当するという。この見解に立てば、ルシファーはやはり、シェルターを積極的に支援していたことになる。ただ、『真・女神転生』シリーズとはスタンスが違ってしまうという問題が残る。

コラム:魔界からの暗号

なぜ、ルシファーは「ルイ・サイファー」という仮名を選んだのだろうか。ここで注目すべきは、サイファーという言葉である。

サイファーとは、英語で暗号の意味があるが、そのルーツはインドにあり、ゼロという概念を表す言葉だった。その言葉は、創造神ブラフマーをも表したという。ゼロの概念は、「『無』というものが『有』る」という矛盾した意味を抱える、特異なものだ。

一方、ルシファーが敵対する唯一神は、万物の創造主、言い換えれば、人間が認識しうるありとあらゆるものの造り主であるとされている。しかし、人間は神の存在を認識している。そうすると、唯一神は、人間の認識が及ぶ範囲の外にいるはず(『無』)なのに、認識されている(『有』)という矛盾を抱えた、特異なものといえる。

ルシファーは、神になろうとして唯一神に戦いを挑み、敗れて堕ちた存在である。今なお、彼は唯一神の座を奪い、その絶対的な力を手に入れたいと望んでいるはずだ。だとすれば、その本質が唯一神と同じである、サイファーという名を名乗ることも、その意思の表れとして自然なことではないだろうか。

コラム:研究内容について

ミュータントの研究者たちが語ってくれる研究内容は、ストーリーとはほとんど無関係なのだが、偽典の世界観を深めるという観点からは、なかなか興味深い。

たとえば、命令を組み込んだレトロウィルスを体内に入れ、生身の肉体を自由に強化・変形させる研究というのがある。どうやら、悪魔の体内から取り出したウィルスの遺伝子を操作して用いるらしい。これが実用化されれば、貴重な人体パーツを機械に換えなくていいわけだ。将来、ライカンスロープ(獣人)の能力と人間の理性を併せもった強化人間が出現することになるのかもしれない。

また、寄生生物に関する研究も行われている。任意の別生物を体内に取り込んで、その能力をコントロールし、意のままに利用しようというものだ。この研究の応用技術が、癒着ペットなのだという。研究が進めば、悪魔合体のような不確定要素の強い危険な方法を用いることなく、人間の能力を向上させることができる。

ちなみに、マンガ『デビルマン』に登場するデーモンは、生物のみならず非生物まで取り込み、その特性を自分の能力とする力を持っていた。上のふたつの研究は、このアイデアを偽典の世界観の中に位置づけなおしたものといえよう。

コラム:ミュータント

神田のミュータントたちは、ふつうの人間よりも優れた頭脳をもっていて、最先端科学の研究を行っているという設定になっている。このような、異形の者が同時に異能者でもあるというモチーフは、神話・伝承の中にも見られる。たとえば、有名なのは北欧神話のドヴェルグ小人。これはファンタジーではおなじみの、ドワーフの原型である。

彼らは原初の巨人ユミルの死骸に蛆虫として湧き出たとされ、醜く、頭でっかちで、膝までつくような長い腕をしていたという。だが、彼らは鍛冶屋・細工師としては超一流で、オーディンの槍グングニルや、トールの鉄槌ミョッルニルは、いずれもドヴェルグ小人の手になる業物である。

『ヴォルスンガ・サガ』で英雄シグルズ(ジークフリート)が振るう聖剣グラムも、「こびと」が鍛え上げたものとされる。また、ロキがアンドヴァリという名のドヴェルグ小人から取りあげた金の指輪には呪いがかけられ、指輪を持つものは死の運命につきまとわれることになった。龍に変身したファフニルや、シグルズ自身もこの指輪の餌食になっている。のちに、この指輪の伝説は『ニーベルンゲンの指輪』やトールキンの『指輪物語』に受け継がれることになった。

このモチーフの最近の例としては、映画『トータル・リコール』が挙げられる。火星が舞台のこの映画では、レジスタンスのリーダーがミュータントで、人間の体内から出現する。彼は、赤子とも老人ともつかぬ容貌で、高い知性を備えていた。ひょっとすると、癒着ペットや、あとで登場するヒルコの元ネタは、ここにあるのかも。

もうひとつ、映画『もののけ姫』を忘れるわけにはいかない。主な舞台であるタタラ場に登場する、全身を包帯で巻いた人々(ハンセン病患者)。彼らは有能な技術者であり、銃や火筒を生産してタタラ場に貢献する存在として描かれていた。

慈悲深き守護天使

神田をあとにしたら、次の目標は御茶ノ水シェルターだ。ここを素通りして秋葉原まで足を伸ばすこともできるのだが、先にここを後略しておかないと手遅れになるので、秋葉原は後回しにする。なお、手遅れになった場合の展開については、次節で述べる。

御茶ノ水シェルターについては、伏線があった。ムールムールがDDMで初台シェルターに侵入したとき、憑依した体を使って御茶ノ水にDDM(AIM.BINという添付ファイル)を送りつけたのである(第1章5節参照)。いったんは回収されたはずだが、悪魔勢力が初台を制圧したあと、再度送付された可能性は高い。はたして、御茶ノ水シェルターは無事なのか?

中へ一歩足を踏み入れると、そこは空気の質が違っていた。外とは比べものにならないくらいに暑く、重苦しく淀んでいた。見れば、エレベータは破壊されている。階段を使って降りるしかないが、途中、ダメージゾーンがちらほら。

B4F。最初の扉を開けたとき、葛城の目に飛び込んできたのは、無惨にも破壊され、半ば廃墟と化したシェルターの姿だった。異常な高温にさらされたらしく、あちこちの壁が熔け出している。もはや、疑いようもなかった。このシェルターもまた、悪魔の襲撃を受けたのだ……。

そのとき、ひとりの天使が、その場に現れた。実体ではなく、ヴィジョンであるらしい。天使の名はファニエル。ファニエルは葛城たちの傷を癒してくれたあと、話しかけてくる。

いま、シェルターはアイム率いる悪魔の軍勢の襲撃を受け、壊滅の危機に瀕している。見かねたファニエルは、仲間の天使たちの制止を振り切り、たったひとりで地上に降臨し、シェルターを守護しているという。わずかに生き残った住民たちを最下層部に避難させたものの、籠城するほかなく、追いつめられてしまった。アイムの操る炎の力は強大で、これ以上持ちこたえるのは難しい。にもかかわらず、仲間の天使たちは、人間界に関与することはタブーだといって見て見ぬふりをするばかり。

そこで、葛城に力を貸してほしい、というのがファニエルの頼みだった。葛城がもつ、類い希なる力。それは、アイムを斃し、シェルターを救えるだけの力である。ファニエルはアイムの口ぶりから葛城の存在を知り、葛城が訪れるのを待っていたのだ。ここで、ファニエルの頼みを引き受けるかどうかによって、以後の展開が変わる。ここでは、引き受けることにする。

下層を目指して進んでいく。B4Fは、ほぼ一本道。迷う心配はないが、アイテムも落ちていない。降天使ブエルと堕天使ハルパスが出現する。シャンシャンシティでブエルのDDSデータをダウンロードしていれば、会話によって無駄な戦闘を回避できる。固定悪魔は、悪霊ファントムと幽鬼グーラー。

B5F。悪霊ピシャーチャのムドに注意。固定悪魔の魔人ヴァンピールを斃した先に、ターミナル回線とリンクした端末がある。ここでセーブしておく。端末がある場所から、下り階段とは反対の方向に進み、固定悪魔の邪龍ジャバウォークを撃破すると、その先で魔石を入手できる。階段のあるほうへ進むと、5,200マグを拾える。

B6F。闘鬼スパルトイのほか、固定悪魔として、悪霊ファントムと幽鬼マンイーター、そして凶鳥ラケシスが出現。魔石×5を拾える場所がある。B7F。道なりに進むだけでよいが、くまなく回ると、聖酒菊娘と天の香を入手できる。B8Fでは、幽鬼ヴェータラや降天使ゼパールが出現。ヴェータラの光る目は、「麻痺」の追加効果があるので注意。固定悪魔として、邪龍ワイアームに2度遭遇する。

シェルター内は原宿シェルターに負けず劣らず広いが、内部の構造はあまり複雑でなく、進むのは楽である。ただ、出現する悪魔のレベルが上がってきており、シャンシャンシティよりも厳しい戦いを強いられることになるだろう。しかも、泪と違ってレベルの低い英美は戦力としてあまり当てにならない。強力な仲魔のサポートがないと、場合によっては全滅もありうる。まだ氷狼剣を持っていなければ、堕天使シトリーを斃しまくって、ボス戦までには入手しておこう。また、下手に寄り道をするとダメージゾーンに何度も足を踏み入れることになる。有用なアイテムはあまり入手できないので、無理をせず攻略を優先したほうがいい。

B9F〜B11Fの間は、一方通行が多く、固定悪魔が多数出現する。B9Fでは、屍鬼コープス。このフロアでは、聖水を入手できる。B10Fには、邪龍ジャバウォーク、屍鬼コープス、降天使マルコキアス、鬼女ラミアなどが出現。B11F。固定悪魔で注意すべきは、外道ダークネスだ。武器が通じないのである。ほかに、邪鬼オーガや邪龍ワイバーンなどが出現する。

最難関は、B12F。まさにダメージゾーンの嵐。数歩進むだけで相当なダメージを受ける。これは、悪魔の炎が撒き散らされたもので、物理的な燃焼作用とは関係なくエーテルが燃えているため、燃え尽きるということがないのである。傷薬などで回復するのではとても間に合わないので、宝玉を何個か失うことになるだろう。なお、途中でエンゼルヘアーを拾える。ファニエルが落としたもの……かどうかはわからないが、体力を大幅に回復できるので重宝する。

ダメージゾーンを抜け、奥の部屋までやってくると、そこにアイムがいた。扉を破壊すべく炎をぶつけているのだが、ファニエルの力に守られた扉は、なかなか壊れない。あの腐れ天使め、奴さえいなければ、とっくにこんなシェルターなど焼き尽くしているものを、と悪魔は毒づいた。

アイムが、葛城たちの存在に気づく。ファニエルに頼まれてやってきた者だとわかると、嘲笑を浮かべた。貴様らの断末魔の悲鳴を、あの天使や中にいる者どもに聞かせ、絶望させるのも一興――そういうと、悪魔は炎の矛先を葛城たちのほうに向けた。

コラム:アイム

別名ハボリム。ソロモン王によって封印された72柱の魔神のひとりで、火炎公の称号をもち、26個軍団を統べる。三つ首で、1つは蛇、1つは猫(または子牛)、もう1つは人間で、その額には2つの五芒星が刻まれているという。決して消えることのない松明を手にし、この世に火炎地獄を作るため、見るものすべてに放火しようとする。常に赤みがかった煙に包まれ、地獄の毒蛇(またはトカゲ)にまたがっているとされる。魔術師を賢明にする力をもち、個人的な事柄に対して回答を与えるともいわれる。

いままさに、御茶ノ水シェルターを火炎地獄に変えようとしている、堕天使アイム。こいつに火炎系の攻撃はまったく効かないどころか、すべて反射されてしまう。また、衝撃系魔法も吸収してしまうため、(仮に手にしていたとしても)風塵剣は通じない。一方、やはり氷結系魔法はよく効く。さらに、アプサラス(神田地下研究所でダウンロード)を召喚し、水の壁を張らせれば、火炎系攻撃は回避できる。ただ、アプサラスはときどき舞踏状態になることがある。

アイムは、マハアギラ、アギラオ、ブレイズブレスなどを繰り出してくるが、火炎公の称号をもつにしては、それほど強力とはいえない。また、破壊の歌で結界を無効化される場合もあるが、再度張り直せばすむし、それだけの余裕もある。体力こそかなり高いものの、しぶとく攻撃していればそれほど苦戦することはないだろう。さらに氷狼剣があれば、戦いはもっと楽になる。

アイムを屠ると、ふたたびファニエルのヴィジョンが現れる。避難していた住民たちは、みんな助かったそうだ。このシェルターもしだいに復興していくでしょう、と天使は言い、葛城たちを出口近くまで送ってくれる。

都庁再陥落

しばらくの間、御茶ノ水シェルターは復興作業のため立入禁止になる。そこで、シェルターを出たら、一度神田地下街へ戻ろう。すると、入口付近で、驚くべき噂を耳にする。新宿都庁がふたたび悪魔に乗っ取られたというのだ。そのため、あちこちにペンタグランマの生き残りが逃げてきており、もめごとが絶えないらしい。事の真偽を確かめるべく、地下研究所のターミナルからマイシテーへ移動する。

どうやら、マイシテーのほうは無事だったようだ。いつもと変わらず人々が生活しているように見える。が、外へ出て都庁に行こうとすると、見えない壁に阻まれて進むことができない。いったいどうなっているのか。

マイシテーに戻って、居住区で話を聞く。すると、悪魔が渡邊とすり替わっていたとの情報が。アドニス率いる悪魔たちによる奇襲は、陽動作戦にすぎなかった。勝利の美酒に酔い、油断した隙を突かれたペンタグランマは、それに気づかない。悪魔たちの真の狙いは、渡邊を殺し、渡邊になりすまして都庁奪還の機会をうかがうことにあったというのだ。

これで、いままでの出来事すべてに納得がいく。なぜ、悪魔は襲撃後すぐ撤退したのか。なぜ、渡邊は代々木労働キャンプから戻った葛城たちにスパイの嫌疑をかけたのか。そしてなぜ、かわいがっていた犬たちを襲撃後に処分したのか。奇襲を受けた際、渡邊の部屋で顔を撃たれて転がっていた死体、それが本物の渡邊だったのだ。すると、あのとき葛城と園田が一瞬だけ見た強大な悪魔こそ、渡邊に化けた張本人なのだろう(第3章5節参照)。

ペンタグランマの連中は、渡邊のことを心底信じ切っていた。だから、渡邊の言動が多少おかしくなっても、疑う者はいなかった。まんまと渡邊に化けた悪魔は、頃合いを見計らってその正体を現し、手下どもを呼び寄せたのである。もし、ペンタグランマが都庁に籠城していたら、これを真正面から攻撃して陥落させるまでには、バエルの軍勢にもかなりの損害が出たことだろう。だが、内部から崩壊させれば、残党の掃討はたやすい。文字通り、悪魔的なアイデアだった。

結局、リーダーを失ったペンタグランマは瓦解してしまった。残ったメンバーも、意気消沈してレジスタンスを再編成するどころではないようだ。それに、これだけの規模の人数を統率できる人間など、そうはいるはずがない。やはり、人間の力で悪魔に勝つのは不可能なのか?

なお、ペンタグランマのメンバーの何人かは、シャンシャンシティに逃げてきている。街の噂では、都庁が襲われたときにかなりの人数が殺され、残った人々も散り散りになったという。また、危険を避けるべく、マイシテーから移住してくる人も増えているらしい。

神田へ戻り、旅を続ける。この時点ではまだ、御茶ノ水シェルターは復興していないだろう。それもそのはず、実は、ルイ・サイファーと会話しないかぎりフラグが立たず、いつまで経ってもシェルターは復興しないのだ。そこで、彼と会話し、培養槽の設置場所がないことを再確認する。これでOK。あらためてシェルターに向かうと、見事復興しているはずだ。

エレベータも復旧しているので、これに乗ってB4Fへ。最初にファニエルと遭遇した場所で、ふたたびファニエルのヴィジョンが現れる。葛城たちがやってくるまで待っていてくれたのだ。天使からお礼の言葉を受け取り、シェルター内に部屋を用意したと告げられる。B7Fの最も広い部屋だという。それだけいうとファニエルは、昇天していった。

ちなみに、このイベントは属性に影響を与える。ファニエルの依頼を引き受けると属性がLAWに傾くが、反対に断ると、CHAOSに傾く。また、引き受けたうえでアイムを斃すと属性がLIGHTに傾く。一方、救援要請を断ったにもかかわらず、アイムを斃す(秋葉原に行っていなければ、攻略は可能)と、属性はCHAOSへと大きく傾く。たしかに、一貫性のない混沌とした選択をしたわけで、納得のいく結果といえる。

中を探索してみよう。かなり広い。最下層はB14Fというから、いままで訪れたシェルターの中でも最大だろう。空き部屋も多く、まだまだこれから復興を進めていくという感じだが、邪教の館をのぞき、施設は一通りそろっている。B5Fに武器屋、防具屋、道具屋が、B6Fには病院、薬屋、酒場がある。

それぞれの店にけっこういいアイテムがあるので、しっかり品定めをしよう。武器屋にはなかなか強力な銃が置いてある。ヨシツネN9やハイパーフォトンあたりが注目株だ。防具屋では、サイバネアーマーIIやサイバーアームがおすすめ。全身鎧はトータルで見ると防御力が落ちるので、買うだけ無駄である。

道具屋には反魂香があり、これを回復ポイントで焚けば、瀕死ばかりか死をも回復する。また、道反玉ちがえしのたまも瀕死を治療する効果がある。どちらも値が張るが、それだけの価値はある。それから、エンゼルヘアーも役に立つので、多めに買っておこう。薬屋の牛黄丹は、猛毒と麻痺を同時に回復できるので持っておいて損はない。

B5Fにターミナルが設置されている。AMSデータをダウンロードし、セーブしておく。B7Fには約束どおり葛城の部屋がある。ここで休息すれば、MPの回復をはかりつつセーブも可能というメリットがある。また、個人培養槽を購入した場合はここに設置することができる。

B14Fまで、話を聞きながら丹念に回る。シェルターを救った葛城は、英雄として、住民から下にも置かない扱いを受ける。しかし、その住民の中にデビルバスターはいない。実戦経験のない彼らは、闇雲に悪魔に向かっていくだけで、みんな返り討ちに遭い、全滅してしまったのだ。また、男性の数も圧倒的に少ない。やはりアイムの襲撃を受けた際に命を落としたのである。

複数回話しかけると、メッセージが変化することがあるので、注意しよう。銀座にある金星教団の話や、大手町に救世主を仰いでいる教団があるという話なども聞ける。あと、シェルターのコンピュータには、対ウィルスプロテクトがかけられていたことが判明する。

ファニエルに護られたことがきっかけとなり、信仰なきシェルターの人々に信仰心が宿ったようだ。とくに、エリート階級から見捨てられた労働者階級は、神の愛が平等であると強く感じたらしい。ただ、ファニエル以外の天使は見て見ぬふりをしていたわけで、誤解とも思えるのだが。また、差別主義は根強く残っており、悪魔人は忌み嫌われる存在のようである。

B9Fの宝箱にはダイヤモンドが入っている。まさにこのために御茶ノ水シェルターを攻略したのだといってもいいくらい、これは大事なものだ。以前、魔人・母子合体悪魔人から1個入手したが、これで2個になった(第2章2節参照)。ずっと先になってからわかることだが、イベントの関係上ダイヤモンドが絶対必要になる。そして、ダイヤモンドを入手できるのは、ここ御茶ノ水シェルターしかないのだ。なお、B14Fには魔法の宝箱があって、満月になるたびにダイヤモンドが手に入る。

さて、以下では御茶ノ水シェルターを素通りし、もしくはファニエルの救援要請を蹴って、秋葉原に行ってしまった場合について触れていこう。秋葉原で起こるイベントについては、次章で触れるのでここでは書かないが、イベント後に御茶ノ水シェルターに行ってみると、そこは完全な廃墟になってしまっていた。

B4Fへ降りると、やはりファニエルのヴィジョンが現れる。「あなたたちは遅すぎた。すべては終わってしまったのです」。天使は嘆いた。「兄弟たちが力を貸してくれれば、いや、私にもっと力があれば……」。嬉々として人々を焼き殺すアイムの姿が目に浮かぶ。もちろん、生き残った人など皆無だ。

ちなみに、ファニエルの要請を断った場合、彼は、人間などを頼ろうとした私が間違っていました、と痛烈なことを言ってくれる。慈悲深い天使ではあるが、ひょっとしたら心の底では高位悪魔と同じように、人間を下等生物だと見下しているのかもしれない。ただ、潰滅後の御茶ノ水シェルターにやってきた葛城たちを、非難することはない。それは理性のなせる技か、それともたんに諦めているだけなのか……?

ところで、御茶ノ水シェルターが廃墟になってしまった場合、ダイヤモンドをどうやって入手するかが問題となる。実は、B14Fの魔法の宝箱は残っている。が、悪魔の巣窟と化したシェルターの中を歩いて最下層まで降りるのは、かなり骨が折れる。当然B12Fの、鬼のようなダメージゾーンも健在だ。しかも、いまやこのエリアにも悪魔が出現するので、HPが激減する状況の中で戦闘するハメになる。

魔法の宝箱にたどり着くまでに、相当な距離を歩かなければならない。だから、その移動の時間も計算に入れて、たぶん満月の少し前にシェルターに入る必要があるだろう。たかだか宝石1個のために、じつに面倒な話である。それに、廃墟のシェルターを歩くのは、なんとなく良心が痛まないだろうか。自分が見捨てたとなればなおさらだ。

余談だが、B12Fのダメージゾーンに出現するのは、天使ダニエルである。なぜ、ファニエルが去ったシェルターに天使がいるのか。おそらく、彼らはシェルターの元住人たちだろう。ファニエルと神の加護を信じながら死んでいったので、天使に転生することができた。だが、思い出深いシェルターを離れられずにいるのだ。哀れである。

余談ついでに、もう一言。なぜ、ファニエルは御茶ノ水シェルターだけを助けたのだろう。おそらく、ここだけはゾンビ化されなかったからだ。さしもの天使も、ゾンビになってしまった人間を救うのは難しい。だが、炎の脅威にさらされた人々を守ることなら、できたわけである。

今回はここまでにしておこう。次は秋葉原からのスタートとなる。では、また次回。

コラム:ダニエル

神話・伝説上のダニエルとしては、旧約聖書『ダニエル書』に出てくるダニエルが有名だ。彼は、壁に書かれた予言の文字を解読してバビロニアの滅亡を言い当て、獅子の穴に投げ込まれたときも神の加護によって命を救われた。また、啓示によって終末の幻を見せられ、大天使ガブリエルにその内容を解釈してもらうのである。

しかし、このダニエルは預言者であって天使ではない。ではなぜ、偽典では天使ということになっているのか。この点について、生体エナジー協会の『悪魔全書』に興味深い記述がある。偽典のダニエルは映画が元ネタになっているというのだ。

『ベルリン・天使の詩(原題:Der Himmel uber Berlin)』(ヴィム・ヴェンダース監督、1987年西ドイツ)の主人公の名が、ダニエルなのだそうだ。この『ベルリン・天使の詩』がリメイクされて、『シティ・オブ・エンジェル(原題:CITY OF ANGELS)』(1998年アメリカ)になったらしい。たしかに、鈴木大司教なら、こういう名前の選び方をしそうなので、十分ありうる話だといえよう。


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