○龍神 龍族系

チンロン
 青龍(Qing-Long)。中国の幻獣。四神の一柱で東方(春)を守護する。四神の中では至尊のものとされ、成功と出世を意味する瑞獣である。五行では木を司るとされるが、水神とされることも多い。
 古くは星座のことであったらしい。春を司るとするのはその名残である疑いが強い。東方に配されたのは五行説との関りのためと思われる。瑞獣とされてからは厄除けの意匠として頻繁に用いられた。日本の一部地方では竜族の王として青龍権現の名で祭られている。

キングー
 バビロニアの神。その属性ははっきりしないが本来は大気や大地の神であったらしい。月神シンとはしばしば同一視されている。
 アプスーが殺されたあとティアマトの二番目の夫となり、天命のタブレット「トゥプシマティ(tupsimati)」を得て世界の支配者となる権利を得る。その後ティアマットの生み出した怪物の軍勢の司令官となるがマルドゥークに敗れて処刑され、天命のタブレットも奪われている。その血から人間あるいは「命ある水」(海、川など)が生み出されたという。
 一説にキングーをティアマトの息子でマルドゥークの兄とするものがあり、それによるとティアマトから支配者の地位を与えられたキングーに嫉妬したマルドゥークが彼を殺してその地位を奪ったのだという。
 古くはアプスーあるいはムンムと同一であったかもしれない。その原形を生贄として殺された古代の王に求める向きもある。キングーが与えられた天命のタブレットは後にカナーンに伝わって契約の石版となり、ユダヤでは十戒の石版となった。なおモーゼが十戒の石版を授けられたシナイ山は元々キングーと同一視される月神シンの山であり、シナイの原義は「シンの山」であった。

トヨタマヒメ
 豊玉毘売命(とよたまひめのみこと)。日本の海の女神。
 海神(オオワタツミ、一説にはトヨタマヒコ)の娘であり、海幸山幸神話において山幸彦(ホヲリ)と恋に落ち、その妻となりウガヤフキアエズを産む。しかし出産の際に本来の姿である八尋和邇(やひろわに)に戻っている姿を夫に見られたため再び海神の国に帰った。なお八尋和邇はいわゆる鰐ではなく鮫あるいは龍であるらしい。
 後代になってそのイメージは民間伝承における竜宮の乙姫の原形となったとされる。

ペクヨン
 白龍(Pek-Young)。朝鮮の幻獣。
 白は朝鮮の象徴であり、龍は東方を意味する。すなわち東方から招来する太陽光の神格化であり、同時に国家の守護神である。朝鮮の王族もまた龍に形容された。
 中国の龍神信仰の影響が大きいと思われるが、日本各地に存在する古代の太陽龍信仰との関連も疑われる。中国の幻獣である白龍(Bai-Long)との関係は薄いと思われる。

カヤノヒメ
 鹿屋野比売神(かやぬひめのかみ)。草野姫などとも表記される日本の野と草の女神。別名を野椎神(のづちのかみ)と言う。
 イザナギとイザナミの子で山の神オオヤマツミとの間に霧や暗闇の神々を子としてもうけている。
 後代になって名前の類似から民間伝承の蛇身の幻獣野槌(ノヅチ)と同一視される様になったが、本来は別の存在と推察される。

参考:龍王 ノヅチ

ナムチ
 日本の龍神。海神にして神格化された太陽である。オオナムチと呼ばれる事も多い。
 記紀神話ではオオナムチはオオクニヌシの元々の名とされているが、オオクニヌシそのものは畿内王権が各地方を取り込んでから創られた複合神格であり、本来オオナムチは出雲地方の土着神の蛇神であった。同様の神格は日本各地で信仰されており、征服された海洋民族の共通の主神だった疑いもある。
 なお地方によってはナムチと呼ばれる大蛇の伝承があるらしいが詳細不明。

参考:鬼神 大国主