○霊鳥 鳥族系

ガルーダ
 ヒンドゥーの幻獣。ヴィシュヌ神の乗り物であり、しばしば鳥族の王ともされる半人半鳥の神鳥。ガルーダ(Garuda)の名は「飲み込む」という意味のgrという単語に由来するとされる。スパルナ(「素晴らしい翼」)の名で呼ばれることもある。
 聖仙カシュヤパの子で、ナーガ族の奴隷となっていた母ヴィナターを救うために、天界からアムリタを強奪する。この時ヴィシュヌとその乗り物となる代わりに不死にしてもらう契約を交わしている。その後さらにインドラとも交渉し、ナーガ族を常食とする許可をもらいその代わりにナーガ族を騙してアムリタ奪還の手伝いをしている。
 後に仏教に取り入れられて迦楼羅となり、八部衆に名を連ねることとなった。

参考:霊鳥 スパルナ 霊鳥 キンシチョウ

八た烏
 八咫烏(やたがらす)。日本の幻獣。その姿は片足あるいは三本足の大鴉とされる。
 神武東征の際にアマテラス(一説にはタカミムスビ)により遣わされ、遠征軍を導いた。賀茂建角身命(かものたけつぬみのみこと)が化身した姿ともされ、賀茂氏の氏神となっている。熊野三神の神使ともされている。
 その原形は中国の霊鳥火烏(かう)ではないかと推察されている。

フェニックス
 ギリシャ/ローマの幻獣。不死鳥と呼ばれる霊鳥で、鷲に似た猛禽類の姿をしているとされる。フェニックス(Phoenix)という名は元々ギリシャ語のPhoinix(「紅いもの」)であった。
 アラビアに棲んでいるとされ、500年(異説あり)ごとにエジプトで自らを火葬に付し、炎の中から幼鳥として再生するとされる。しかし古くは死の直前あるいは死後に親鳥から生まれた子鳥が親鳥の遺骸をエジプトにて火葬にするという形式であった。
 元々は生贄として火葬に付された後に再生するカナーンのバール神をエジプト人がポイニクス(Phoinicesはフェニキア人の意)と呼び、神鳥ベンヌと同一視したことに由来するらしい。生息地とされるアラビアにはフェニックスらしき霊鳥の伝承は存在していない様である。
 火の中から再生するそのイメージは後代になって復活するキリストの象徴ともされたが、中世に入ると悪魔ともされて不死侯の名を冠するソロモン72柱のデーモンの一員とされた。

ジャターユ
 ヒンドゥーの幻獣。禿鷹の姿をした霊鳥。鳥王とされることもある。
 ガルーダあるいはその兄アルナの子とされ、魔王ラーヴァナがラーマの妻シータを強奪しようとした際にこれと闘うが敗れ、ラーマにシータ強奪を知らせて息絶えている。

鳳凰
 中国の幻獣。五色の羽根を持つとされる神鳥。鳳は雄、凰は雌を表す。古くは鳳の一字だけで表記されていた。不死鳥、神鳥、鳥王、霊鳥、仁鳥、聖禽等、多数の異名を持つ。
 鳥類360種の長であり、天帝の使いとされる瑞獣。天下泰平の時にしか出現しないとされ、龍、亀、虎ともに古くから四霊と呼ばれ尊ばれた。東方の君子国に棲むともされている。最高級の瑞獣であるため図象に用いられることは極めて多い。
 古くは風神とされていたらしいが、後代になって火の精とされる様になった。四神の一角である朱雀の原形であり、同一視されることも多い。同じく瑞鳥である鸞(らん)ともしばしば同一視される。ヒンドゥーの霊鳥カラヴィナーカ(迦陵頻伽)との関係を見る向きもある。鳳凰の原形はマレー半島やスマトラ、ボルネオ等に生息するカンムリセイランではないかとされている。

スパルナ
 ヒンドゥーの幻獣。スパルナSuparnaは「素晴らしい翼」の意。
 神鳥ガルーダの異称であるが区別されることもあるらしい。
 金翅鳥の名はこれに由来している。

参考:霊鳥 ガルーダ 霊鳥 キンシチョウ

キンシチョウ
 金翅鳥(きんしちょう)。仏教の幻獣。コンジチョウと読む場合もある。一般には迦楼羅(かるら)と呼ばれることが多い。妙翅鳥(みょうしちょう)等の別名もある。
 ヒンドゥーの神鳥ガルーダが仏教に取り入れられたもので、仏法を守護する天龍八部衆の一角を占めている。文殊菩薩あるいは梵天、大自在天、毘紐天等の化身ともされる。単に金翅鳥と言う場合は種族を指し、迦楼羅はその王とすることもある。また中国の霊鳥青濁(せいだく)の和名とする場合もある。迦陵頻伽(かりょうびんが)と混同されることも多い。
 日本に伝わってからは鳥頭人身のその姿は鴉天狗の原形となった。

参考:霊鳥 ガルーダ