○聖獣 獣族系

シーサー
 日本の幻獣。唐獅子に似た姿で描かれる。シーサーの名はそのまま「獅子」の意であるとされる。
 琉球では火災を招く死者の霊魂を祓う力があると信じられ、その像は魔除けとして屋根の上に飾られた。
 元々は中国の幻獣獅子(唐獅子)が琉球に伝わったものである。日本の幻獣狛犬(こまいぬ)とはその起源を同一にしている。

白蛇
 日本の幻獣。神あるいは仏の使いとされることも多い白い蛇。
 蛇は古くから再生を繰り返す不死の神霊として信じられており、また中世以後では蚕神としても信仰されていた。白は神聖と吉祥を表す色であるから白蛇は神の使いとされる。白蛇伝説は日本各地に存在しており、蛇神として信仰される他、諏訪大明神(タケミナカタ)や弁才天、不動尊、観音等の使いとされている。
 なお生物としての白蛇は山口県岩国市近辺にのみ生息する実在の国指定天然記念物で、伝説によれば関ヶ原の戦い(1600年)の後、岩国藩初代藩主となる吉川広家が周防国岩国(現岩国市周辺)に移封された頃、米倉でネズミを餌にしていたアオダイショウが突然変異で色素のない白い種に変わり、それが遺伝して現在の白蛇になったとされている。現存する最古の目撃記録は1738年のものである。岩国では白蛇は幸運を運ぶ家の守り神として珍重され手厚く保護されてきた。

アピス
 エジプトの幻獣。神に捧げられる聖なる月の牡牛。
 古代エジプトでは毎年アピスたる牡牛が選び出され、神への生贄として殺され、そしてミイラにして埋葬された。
 元々はメンフィス土着の創造神プタハの顕現とされる街の守護神であった。アピスが生贄の牡牛となったのは後にプタハが豊穣神であるオシリスに取って代わられたためであるらしい。プトレマイオス朝時代にはオシリス・イシスと融合されてセラピス(オサラピスとも)神として信仰され、さらには多くの神々を取り込んでエジプトの最高神となった。ヘレニズム時代以後ではゼウス/ユピテルとも同一視されている。後代にはキリスト教に取り入れられて聖セラピオーンとなった。

白狐
 日本の幻獣。姿はその名の通り白い狐である。
 稲荷神(ウカノミタマ)の神使であるとされ、後代にはしばしば稲荷神自体も白狐と見なされるようになった。白狐そのものも時には神道系では命婦神、仏教系では茶吉尼天の化身白晨狐王菩薩等として信仰の対象となった。現世利益神としての稲荷信仰がさかんになると白狐の像は縁起物とされるようになり、特に商人の間で好まれた。
 狐が稲荷神の神使とされた理由については諸説あり、同じく穀物神で同一視されるウケモチノカミをケツネと呼んだところからの名前の類似に由来する、あるいは稲荷神と習合した仏教の茶吉尼天が野干(狐と同一視される幻獣)に乗るとされたことによる、等とされている。もっとも狐は古くから田の神として信仰されていたらしい。稲荷神自体は元々は秦氏の氏神であったらしく、ウカノミタマとは別の神であった疑いがある。
 白狐が尊ばれる理由は陰陽の五行説と深い関りが有る。本来狐は黄色とされており(事実最古期の狐信仰では狐は黄色であった)故に土気の動物とされるが、「金」の象徴色である白色をした白狐はすなわち「土生金」の体現した瑞獣であると認識され、さらに「生金」を「金銭を生む」とかけたこと(この背景には稲荷神が現世利益神であったことがある)によるとされている。白狐以前は「土克水」の象徴(すなわち洪水を防ぐとされた)として黒狐が一時期信仰されていた。

参考:魔獣 キツネ