○妖鳥 鳥族系

モーリアン
 ケルトの死と戦いの女神。バイヴ・カハの三女神の一人で姉妹はマッハとネヴァン。モーリアン(Morrigan) は「大いなる女王」の意。太女神ダヌー(ブリーイッド)や妖精女王マブとも同一視されることがある。
 ダヌー神族の主神ヌァザの妃(三姉妹とも)あるいは大神ダグザの愛人とされ、大鴉の姿をとる血に飢えた女神とされる。英雄クー・フーリンに言い寄るが拒絶されたため、彼に敵対し死の呪いをかけた(あるいは単に戦いの邪魔をするようになった)。ただし一説にはその後命を助けられて和解したとも。
 三女神はモーリアンの三相と解されることも多く、さらにその構成も時折変化する。また三相を乙女アナ、母バブド、老婆マッハとする説もある。モーリアン自体は古くは太女神で運命神であり、そしておそらく元々は月の女神であった。その原形は中央アジアの古い月女神マハ・アラと共通かもしれない。
 モーリアンの姿は後にアーサー王伝説等に受け継がれて魔女モルガン・ル・フェイとなったとされる(ただし異説あり)。

参考:妖鳥 マッハ 妖鳥 ネヴァン

ケライノ
 ギリシャの幻獣。ハルピュイア(ハーピー)三姉妹の一人。ケライノ(Kelaino)は「黒い女」の意。
 ポントスとガイアの子タウマスとオケアノスの娘エレクトラの娘とされる。虹の女神イーリスとは姉妹。予言の力を悪用したサルオデュソス王ピネウスを苦しめるためにゼウスにより姉妹とともに送り込まれていたが、ピネウスに助言を求めてやってきたアルゴ遠征隊のカライス・ゼテス兄弟に敗れ、(一説には姉妹であるイーリスのとりなしで命を助けられて、あるいは命乞いをして)ストロパデス(エキナーデス)島に移った。後に島を訪れたアーエネイスの一行の前にも現れている。

参考:妖鳥 アエロー 妖鳥 オキュペテ 妖鳥 ハーピー

マッハ
 ケルトの死と戦いの女神。バイヴ・カハの三女神の一人で姉妹はモーリアンとネヴァン。マッハ(Macha) は「亡霊たちの大いなる女王」の意。バズウあるいはバドワと呼ばれることもあるが、区別されることもある。
 ダヌー神族の主神ヌァザの妃であり、他の姉妹同様大鴉の姿をとり戦死者の血を求めて戦場に出没する。その声を聞くものを死に至らしめるという。ヌァザが邪龍クロウ・クルーワッハと戦った時に姉妹とともに加勢するが敗れて殺された、あるいは魔王バロールとの戦いでヌァザが戦死するのを幻視して悲しみのあまり死したとされる。
 本来は三相の女神モーリアンの「死」の相とされるが、一方でモーリアンよりも古い太女神であったとも推察されている。やはりその原形は中央アジアの古い月女神マハ・アラに関係づけられている。妖精女王マブとも同一視されることがあり、その原形であったとも言われる。また一説にバンシーの原形となったともされる。

参考:妖鳥 モーリアン 妖鳥 ネヴァン

アエロー
 ギリシャの幻獣。ハルピュイア(ハーピー)三姉妹の一人にしてその女王とされる。アエロー(Aello)は「疾風」の意。
 ポントスとガイアの子タウマスとオケアノスの娘エレクトラの娘とされる。虹の女神イーリスとは姉妹。予言の力を悪用したサルオデュソス王ピネウスを苦しめるためにゼウスにより姉妹とともに送り込まれていたが、ピネウスに助言を求めてやってきたアルゴ遠征隊のカライス・ゼテス兄弟に敗れ、ペロポネソスのティグリス川に身を投げたと言う。別の伝承ではイーリスのとりなしで命は助けられて姉妹とともにストロパデス島に移ったともされる。

参考:妖鳥 ケライノー 妖鳥 オキュペテ 妖鳥 ハーピー

ネヴァン
 ケルトの死と戦いの女神。バイヴ・カハの三女神の一人で姉妹はモーリアンとマッハ。ネヴァン(Neamhan) は「戦いを混乱させる者」の意。別名をヴァハ(鴉)と言うが区別されることもある。
 やはり大鴉の姿をとって戦場に出没し、戦士達を惑わして同士討ちさせるという。また浅瀬で戦死する人の鎧や武器を洗うとも言われる。三女神ともにダヌー神族の主神ヌァザの妃であり、ヌァザと邪龍クロウ・クルーワッハあるいは魔王バロールが戦った際にヌァザや姉妹のマッハとともに敗れて殺されたとされる。
 三相の女神モーリアンの一相とされるが、独立した別の女神とする説も存在する。元々はケルト人以前の民族の太女神が原形にあるらしい。マッハと同様にバンシーの原形になったとされている。

参考:妖鳥 モーリアン 妖鳥 マッハ

オキュペテ
 ギリシャの幻獣。ハルピュイア(ハーピー)三姉妹の一人。オキュペテ(Okypete)は「速く飛ぶ女」の意。
 ポントスとガイアの子タウマスとオケアノスの娘エレクトラの娘とされる。虹の女神イーリスとは姉妹。予言の力を悪用したサルオデュソス王ピネウスを苦しめるためにゼウスにより姉妹とともに送り込まれていたが、ピネウスに助言を求めてやってきたアルゴ遠征隊のカライス・ゼテス兄弟に敗れ、姉妹とともにストロパデス(エキナーデス)島まで逃げるもそこで力尽きる。一説によるとこの島の名は、戦いに敗れてこの島まで逃げてきたオキュペテが岸で振り返って(estraphe)から倒れた(あるいは岸辺に墜落したとも)ことにちなんでつけられたという。なおイーリスのとりなしで命は助けられたとする説もある。
 『真・女神転生 東京黙示録』(コミックス版)では山背仁美と合体した悪魔として登場、小林章人の手下として日下茉莉花らと戦うが、敗れた後助けられて味方についた。

参考:妖鳥 ケライノー 妖鳥 アエロー 妖鳥 ハーピー

ポルタゲ
 ギリシャの幻獣。ハルピュイア(ハーピー)の一人で一説には三姉妹の一人。正確にはポダルゲ(Podarge)であり「足の速い女」の意。
 ポントスとガイアの子タウマスとオケアノスの娘エレクトラの娘とされる。虹の女神イーリスとは姉妹。西風神ゼピュロスとの間に暁の女神エオスの戦車を引く馬ラエポスとパエトーン、太陽神ヘリオスの戦車を引く馬ピュエロイス、アエトーン、プレゴーン、エーオオス、そして英雄アキレウスの戦車を引く馬クサントスとバリオスを産んでいる。

参考:妖鳥 ハーピー

アエロプス
 ギリシャの幻獣。ハルピュイア(ハーピー)の一人。一説には三姉妹の一人。別名ニコトエ。
 アエローと同一と推察される。

参考:妖鳥 アエロー 妖鳥 ニコトエ 妖鳥 ハーピー

ニコトエ
 ギリシャの幻獣。ハルピュイア(ハーピー)の一人。一説には三姉妹の一人。別名アエロプス。
 アエローと同一と推察される。

参考:妖鳥 アエロー 妖鳥 アエロプス 妖鳥 ハーピー

ハーピー
 ギリシャの幻獣。女性の上半身と顔を持ち、鷲の翼と爪を持った半人半鳥の怪物。ハーピーは英語名で元のギリシャ語ハルピュイア(Harpuia)は「掠め取る者」あるいは「むしり取る者」を意味する。この名は葬儀の際にハープ(むしり取るような手つきで演奏される)を使うことと関係するとする説があるがかなり疑わしい。
 ポントスとガイアの子タウマスとオケアノスの娘エレクトラの間に生まれた娘たちとされる。虹の女神イーリスは姉妹。正確な人数ははっきりしないがアエロー、ケライノ、オキュペテの三姉妹がその長であるとされる。ただし他の名も挙げられている。
 元々は美しい姿であったがいつしか怪物と見なされるに様になり、癒されない飢えに苛まれる醜く不潔な存在となった。古くは神々(ゼウス)の使者であったがその後ハデスの下僕で冥界に棲むものとされるようになり、中世以後では完全に悪魔の一種と見なされた。復讐の女神エリーニュスや運命の女神モイライとはしばしば同一視される。また時折セイレーンと混同される。
 元々はクレタ島の聖地ディクテ山に棲むとされた風の精にして魂の運び手たる有翼の女神たちであった。後の怪物化した姿にはトラキアのオジロワシ崇拝と関係があるかもしれない。

参考:妖鳥 ケライノ 妖鳥 アエロー 妖鳥 オキュペテ 妖鳥 ポルタゲ 妖鳥 アエロプス 妖鳥 ニコトエ

ボギーレイヴァン
 イギリスの妖怪。ボギー(Bogie)は語源は諸説あるが「お化け」あるいは「妖怪」程度の意味。レイヴァン(Raven)はワタリガラスのことだが大型の鴉一般にも用いる。従って訳すなら「お化け鴉」。
 ボギー・ビーストと呼ばれる妖怪動物の一種。特に大鴉は死と不吉の象徴であり、しばしば悪魔の使いとみなされる。先住民族ケルト人の間でも大鴉は死と戦争の女神モーリアンと関連づけられている。
 なおこの悪魔はボギー・ビーストの一種よりもむしろロンドンに出没する都市伝説の「化け鴉」(Monster Raven)を指しているのかもしれない。「化け鴉」はロンドン塔で処刑された貴族の救われない魂の化身とされ、夜になるとロンドン・ブリッジからシティに向けてテムズ川を北上しセント・ポール寺院にまで至り、寺院周辺の鳩を追い散らした後ラドゲートヒルズ、コベントガーデン、ストランドストリートと経由して最後にトラファルガー広場のネルソン提督像に糞をひっかけて姿を消すという。