Last Testament

 「ドイツのほうを睨んだまま、立った姿勢で埋葬してもらいたい!」とジョルジュ・クレマンソーは遺言し、願いはそのとおりかなえられた。オマハ族の酋長ブラックバードも自分の愛馬にまたがったままの姿勢で埋葬されている。(愛馬をどうしたのかについてはいまいち明らかではないが。)サンドラ・ウエスト夫人という人物に至っては「夫の隣にレースのナイトガウンを着たままで、そして愛車のフェラーリに乗せて、シートを楽な角度に傾けた状態で……」と要求し、その遺志のとおり埋葬された。幸いなことに彼女の夫は既に死亡していたのであまり問題は生じなかった。こうした希望への対応に迫られる葬儀屋の皆さんの苦労には涙を禁じ得ない。
 しかしながらヴィクトル・ユゴーの場合はこれほど順調でなかった。彼は遺言で貧民墓地に埋葬されることを望み、実際そこの墓に入れられたのだが、すぐにパンテオンに墓を移すことが決定されため、せっかくの遺言は水の泡となってしまった。

戻る

抜ける