ミクロの傑作展

 プロセッサの集積数が18ヶ月ごとに倍になるほどミクロ技術の発達した現代であるが、その萌芽はローマ時代以前に遡る。
 ミレトス人ミュルメキデスやスパルタ人カリクラデスは象牙で蝿の羽根よりも小さい四頭立て馬車を作ったり、胡麻粒に金文字でホメロスの2行詩を刻んだりしていた。こうした行為は単なる時間の無駄であるとアイアリノスは述べているが、これが的外れな指摘であったことは明白といえよう。
 エリザベス女王時代になるとイギリスの鍛冶屋マーク・スカリオンによって鉄と鋼と 銅で出来た重さ約50mgほどの時計が作られた。この時計は蝿の首にかけられるほどの大きさで、さらに43個の輪からなる鎖がつけられていた。
 17世紀初頭にはドイツ人オスヴァリダス・ノリンゲルスが象牙で1200枚ほどの小さな皿を作ったが、それらは胡麻粒をくり貫いて作った籠に納められていた。同じころレオ・プロネルなる職人もオーストリア大公に刃渡り10cmほどのナイフを献上しているが、その柄の内部には錫の皿24枚、金貨100枚、鋼鉄製ナイフ12本、100個の輪からなる鎖、彩色したサクランボの種、『詩篇』を21の言語で記した羊皮紙を納めた鏡13枚、薄片にスライスされた子供の髪1本が収納されていた。

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