羊頭狗肉

 パリの一角に立つピカソ作のアポリネール像は、実はアポリネールの像ではない。設置をめぐってトラブルがあったため、うんざりしたピカソが別人の像で間に合わせてしまったのである。もっとも油絵だけでも8500枚以上(活動期間を70年として、実に3日に1枚以上のハイペースである)の作品を残した彼だけに、忙しさに負けてお茶を濁したというのが実情かも知れない。
 同様にエクアドルはグァヤキル市に立つ民族詩人ホセ・オルメーゾの銅像は、予算が足りなかった為に中古のバイロンの像で代用されている。ペルーの首都クスコにあるインカ帝國最後の皇帝アタワルパの像も実はネイティブ・アメリカンの酋長ポウハタン(ポカホンタスの父である)の像であるが、こちらは少々事情が複雑で、制作費の都合はついたものの、間違って配送されてきたその像を送り返すだけの金の都合がつかなかったのであった。
 こうしたまがい物の横行の反動か、1976年にカルフォルニアのとある遊園地の首吊り死体の像が本物の死体にすり替えられていたという事件(その後の調査によるとすり替えられてから少なくとも4年以上が経過していたという)が発生した。前述の事情に憤慨した正義漢の犯行の疑い濃厚と言えよう。

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