ある夫人の沈黙

 1842年のある日、フランスは華やかなるヴェルサイユ宮にて、宮廷顧問弁護士ルニエル氏は宮廷内でいざこざに遭い、ご機嫌を斜めにした彼は自分の細君を「黙ってなさい!」と叱りつけた。
 その程度はまあよくある光景であったが、ルニエル氏にとっては不注意なことに相手が悪かった。憤然としたルニエル夫人、夫の命令を実によく遵守し、幾度にわたる夫の謝罪も無視して死去するまでの30年間とうとう一度も口をきかなかった。

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