マーズ・アタック

 1926年1月16日、ポップルバリーなる人物に率いられた失業者の集団がロンドンで暴動を起こしているというBBC放送のレポートに英国人は大パニックに陥った。これから放送するのは全て茶番劇です、というなる予告のことはすっかり忘れ去られていた。
 この英国の事件は大西洋の向こう側のアメリカでは笑いぐさとなったが、それから12年後、有名なオーソン・ウェルズの「火星人襲来」はさらなる大パニックを引き起こし、全米を恐怖の渦に叩き込んだ。放送がフィクションであったことが判明すると恐怖は怒りに変わり、暴徒が大挙してCBSのスタジオに流れ込んだ。ヒステリーの大半は翌日には収まったが、それでもウェルズは一時姿を隠さねばならないほどだった。さらに各地で多くの訴訟が起こされたが、幸いなことにどれも皆法廷で棄却された。
 この事件にはさらなる後日談がある。翌年エクアドルの首都キト市でも件の「火星人襲来」が放送され、やっぱり同じく大パニックが起こった。そして真実を知り激怒した聴衆がラジオ局と新聞社を焼き討ちし、出演者6名を含む21名が殺されることとなった。

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