カラッと抹殺

 イギリス王ヘンリー3世はロンドン塔の中でペットの白熊を飼っており、しばしば連れ出してテムズ川で行水させていた。記録によるとその維持費用として毎月6ペンスが国庫から出されていたらしい。
 この白熊はノルウェー王ホーコン4世の贈呈品と推察されている。ホーコン4世はヘンリー3世だけでなくフリードリヒ2世ら歴代神聖ローマ皇帝にも白熊を贈っており、それどころか友人にもことごとく白熊を贈呈するのが趣味だったふしがある。
 しかしながら次の事実は送り手と受け手の間で白熊に対する認識が違っていたことを示唆していると言えなくもない。19世紀のとある北極探検隊はその任務の途中捕えた白熊の肝臓を食べ、ビタミンAの過剰摂取であわれ全滅の憂き目に遭った。幸いにしてその恐るべき初動計画が潰えてくれたのでホーコン4世の野望も今となっては定かではないが、数年後ヘンリー3世への贈り物をクリスマス・ツリーに変えてしまっているところに計画の失敗に相当消沈したらしいことが見て取れる。

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