円盤が来た

 1947年6月24日、自家用機でワシントン州のチェハリスからヤキマに向かっていた実業家のケネス・アーノルド氏はレイニア山近辺で編隊を組んで飛行していた9機の飛行物体を目撃した。彼がその物体の飛行速度を推定するにその速度実に時速1200マイル、当時はそのような高速で飛行できる航空機は存在しなかったから彼は大変驚き、この目撃を世に報告すべきと考えた。これこそ後に「アーノルド事件」として有名になるUFO目撃事件である。
 彼の目撃物体は6月26日付けのロサンゼルス・タイムズにて「空飛ぶ円盤」(Flying Saucer) と報道され、たちまち大ニュースとして世界中に広まった。しかもその後も怪しげな目撃例やら事件やらが続出した(2週間後の7月8日にはあのロズウェル事件が起きている)ものだから「空飛ぶ円盤」はたちまち大フィーバー、かくて現代の伝説がここに創始されたのであった。以後どういう訳か怪しげな飛行物体はほとんどが円盤型で報告され、事件以前に隆盛を極めていた飛行船(葉巻)型や球型はすっかりなりを潜めてしまった。問題の事件の方も話に尾ひれがつき、飛行物体もジグザク飛行してみたり急旋回してみたりと非常に芸達者なものに勝手に変わる始末である。
 ところで「空飛ぶ円盤」、元々は全くの虚偽である。アーノルド氏は目撃したUFOの飛び方を「Saucerのような」と言ったのであり、UFOそのものの形状について言ったのではなかったのである。彼によると、問題のUFOは受け皿(Saucer)を水切りの要領で水面に投げたときのような感じの飛び方をしていたらしい。もっとも円盤の方はそんなことはおかまいなしに増殖を続けたようで、一時は米国民を年間370万人も誘拐したりとやりたい放題であったようだ。幸いなことに最近は大分なりを潜めたようである。おそらくウルトラ警備隊あたりが頑張ってくれたのであろう。

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